スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています


[小説]犬だと思ったらまじゅうだった

 犬だと思ったらまじゅうだった。コンビニの前にちょこんと大人しく座っている犬の頭をなでようとしたら、ちょっと触れたとたん手が半透明になってしまった。右の手首から先が透けてしまったので、すっかり泡を食って、誰にも見られないように、右手の先を上着で隠しながら、その場から逃げた。
 自転車で片手運転をして、大急ぎで家に逃げ帰ってから、あ、めんぼう、買ってないな、と気づいたけれど、もう一度行く気にはなれなかった。

続きを読む >>

[小説]やたらおなかが空虚でふくらんだのだった

 やたらおなかが空虚でふくらんだ。ぷくーと1メートルくらいふくれあがったので、立ち上がることができないのだった。空っぽがつまったおなかは、とんでもない質量なのであった。
 かろうじてできるのは、手足をジタバタさせることくらいだった。そうしてバタバタさせていると、なんだかだだをこねる子どものようだった。たとえ大きな体でも、子どもなのだった。
続きを読む >>

[小説]デパートにて(後編)

 デパートにて(前編)

続きを読む >>

[小説]デパートにて(前編)

 館内の暖房はやけにあつかった。重たいダウンジャケットを脱いでそれを左腕で抱えてエスカレーターに乗った。左に寄りかかって惰性で進んでいくのでやがて二階に着いた。やたらあついことに気がついたので両腕をまくってみた。三階につくまえに左腕がもそもそして気持ち悪くなったので左腕だけ袖をもどした。三階についたらやっぱり右腕ももそもそするのでやっぱり右ももどした。三階は婦人服売り場だったし、すぐさま四階ゆきに乗ろうと思ったのだがエスカレーター前には官能的なマネキンがたたずんでいた。私は足を止めた。ノースリーブのニットにパンツスタイル、足首は露出しミュールという春めいた姿で色合いも淡目にコーディネートされていた彼女は若い女学生のような華やかさがあり、なおかつそれでいて落ち着いた上品な雰囲気も備えていた。彼女の肌の白さは病的だったし、なにしろ無表情を保って悠然と右斜め前方を見やっているだけだったが、それが余計に私を欲情させたのだろうか。実を言うと、彼女の姿を見たとたん私は自身の顔が一気にほてるのを感じたのだった。さらに背中からは汗がどっと噴きだした。そしてそのむき出しの足首に視線をうつすと心臓が激しく鼓動した。彼女の表情は相変わらずの冷たさだったがそれにひきかえ私の体温はますます高くなったようだった。昂ぶりを悟られないようにさっと目をはずした私は上りエスカレーターに乗りこんだ。婦人服売り場というのがどうしても落ち着かなかったせいでもある。じっくりと彼女を観察することもできなかったが私はほのかな恋の予感を感じた。
続きを読む >>