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京都では三度断る

古い日本の礼儀では勧められてもすぐにもらうのではなく、三度断って四度目に頂戴するのってのがあるらしい。たとえば三度好きと告白して断られてもそれは礼儀を重んじているからであって、本心で断ってるわけじゃないってことです。決してストーカーじゃないんです! しつこいんじゃないですよ! 礼儀なんだからしょうがないです! ちゃんと四度目でOKしてください! お願いします! そこをなんとか! 別にそういうんじゃなくてもちょっと遊びにいくだくだけの関係でいいからさ! ね、ご飯食べにいこうよ! ねー。いいじゃんー別にー。だからそういうんじゃないって! 買い物つきあってもらったりさー、ちょっとさー、ちょっと遊びにいったりさー、ちょっと飲んだりさー、そういうんだから! 別に束縛しないよ。メールもそんなにしないし、もちろん電話だってそんなにしないよ。いやいや、たまーに、だよ、たまーにならいいでしょ? まじで俺しつこい男じゃないから。嫌われるようなことしないって。だからさ、お願い! 体とか、そういうの目当てじゃないから、単に仲良くなりたいなーってそれだけ!ほんと! 普通でいいの、普通で。普通の友達、な! いいだろ? 他に男つくってもいいからさ、てか別に俺とは友達の関係だから言う権利ないんだけどさ、別にそういうの俺かまわないから。な? ちょーっと仲良くなりたいだけなんだよ、いいだろ? な? お前が思ってるほど俺つまらない男じゃないし、一緒に遊んで悪いことないと思うし、絶対損しないから。ほら、今度の休みさ、映画見にいこうぜ。今やってるじゃん、あれ、なんだっけあのアニメの動物のやつ! な? な? いつあいてる? 俺今度の日曜と木曜大丈夫だけど。だめ? 予定があわない? うーん、それじゃあどうしよっか。いつなら大丈夫なの? 見通したたないの? じゃあさまた考えようぜ。今日の夜またメールすっからさ。あー楽しみだなー。

野菜を炒める

料理をするんだけど野菜炒め。なべに。フライパンを持っていないから中くらいのなべに、中くらいのなべしか持っていないのだけど、そうだね直径七寸くらい。そこにサラダ油を少しいれて豚肉、百グラム超値段は百三十円を焼くんだけど、実は昨日失敗しちゃって、先に野菜を炒めてから肉をいれたらなかなか火が通らなくて、豚肉はよく通した方がいいときくから先に焼き後がつくくらい焼くことにして、それで野菜をどさどさといれるんだけど、この野菜っていうのがスーパーで売ってる野菜炒めセットで百円。あらかじめキャベツやらにんじんやらなんやらがカットされてるやつ、これを半分だけいれるんだけど、そこにさらにもやし、これは少量でパックされてるやつで二十五円、これも半分いれて炒めていきます。さいばしでぐるぐるとかんまぜながら炒めていくと、やがてしんなりしてくるんで、そうしたら塩こしょう、これも塩だけ・こしょうだけっていうんじゃなくて、塩こしょうってまぜこぜになってるプラスチック瓶、これをふりふりして、なにしろ出があまりよくないので、出てる気がしないし、よく見えんので結構大げさにふりまくるんだけど、そうしたらまたさいばしでまぜて、タイミングを見計らって顆粒状のだし、それもあわせだしのしか持ってないから適当にパラパラといれます、ありゃ入れすぎじゃあないか、これ、どうなんだ、加減がよくわからん、そうしたらまたまぜてまぜて炒めて、よし仕上げとばかり、しょうゆを、割と多いかなくらいいれてまたまぜて、ごま油ですよ、これが肝なんだよね、味の決め手です、一気に中華になる魔法の液体。これをちょ〜っとだけいれて、まんべんなく行き届くようにまぜて出来上がりです。お皿にどさどさ盛って、食べれば、ああおいしいね、なかなか自分でつくるとおいしいものはあまり出来ないけれど、この野菜炒めだけはおいしいね、やっぱりだしをいれすぎてかつお臭いけど、ごま油も適度にきいてて雰囲気でてるね〜。何しろ節約になるんだよね、だいたい原材料で二百円くらいじゃないかな。一日の食費を千二百円くらいで見積もっているけれどこれなら一日七百円くらいですみそうで、そしたらこれを十日も続けたら五千円も浮くじゃあないかと、そういう皮算用をすれば、これで下着が買える。野菜を炒めて下着を買おう買おう。


電車とホームの間の隙間に

電車とホームの間の隙間が気になっている。電車とホームの間の隙間がおおきいと、なんだか、おおーって気持ちになって、ぴょんて飛び越えるのが楽しい。


もちろん普通は隙間がないほうがいいに決まっているのだが、まれに隙間がおおきいのに出くわすと逆に新鮮で、さわやかな気分になれるのである。


東急東横線の渋谷駅などはドキドキである。アナウンスでも、電車とホームの間にひどく隙間があいている〜うんぬんと注意を喚起していて、やはり足下を見ればぱっくりとあいた口から蠱惑的な虚ろがのぞけるのだった。


乗降の際、誰か一人くらい落ちてもいいだろうと思ってしまうのはあさはかであろうか、あれだけ人がわんさか、どっさりしていてもなかなか落ちる人はいない、いや、僕が見てないだけで、本当は何人か落ちているのかもしれない。僕に内緒で、落ちているのかもしれない。


にしても、そんなに危ないならなおせよ、とつっこむのも浅薄であろうか。何か込みいった事情があるのかもしれない。あれもまた情緒があるから、保守勢力がしっかりとしていて、合理主義一辺倒ではなかなかいかないのだろうか。


にしても、ひどく隙間があいているとはっきり言ってしまうアナウンスもアナウンスである。ネガティブさを全面に押しだしすぎである。それにそんなに強調したら興が失せてしまう。ここはやはり、電車とホームの間に狭くない隙間があります、とか、電車とホームの間に普通とは違った隙間があります、とか、電車とホームの間は大股でお進みください、とか和らいだ表現を用いたほうが曖昧で良い。


今度、東横線に乗るときは、あやまったふりをして落ちてみようかと思う。いや、思うだけで実際には落ちやしない。足を踏みはずす自分を想像して、ヒヤヒヤして、それを愉しみたいと思う。


金原ひとみ「AMEBIC」

金原ひとみの「AMEBIC」を一気に読む。「蛇にピアス」で芥川賞をとった彼女であるが、AMEBICも芥川賞っぽい(きれいにまとまっている)完成度の高い作品であった。

 

よく目にするのは、山田詠美のエピゴーネンだとか、ポスト村上龍だとかいう評であるが、まぁたしかに蛇にピアスは山田詠美っぽいなぁとは思ったが、でも女性の作家が恋愛小説書くとたいてい山田詠美の影響下からは抜け出せないので、それはたいして気にしてはいない。

 

 

なにより金原ひとみの小説のどこがすばらしいといえば、語りのスピード感がとてつもないところなのである。「アッシュベイビー」の時もおおいに指摘した点である。

 

 

単行本51ぺーじから61ページまで、400字詰め原稿用紙にすると30枚ほどだろうか、アメーバに関する記述がでてくる。この部分がすごい。語りのテンションが徐々に上がっていき怒濤のスピードを持つのである。引用する。

 

 

 

 

 死を想像して背中に悪寒が走る事もあれば、その未知の想像に夢膨らませる事もある。私の未知、それは誰も知らず、私も知らない。そんな事を考えていたら瞬間的に視界が二重になり、それが続けて二度起こった。
(中略)
私というものは無色透明で、実体などないのかもしれない。ああそう考えるとアミーバが羨ましい。脳が羨ましい。スパークが羨ましい。陰部が羨ましい。陰部は脳を持っていないし、スパークを見ていないし、アミーバを見たりもしていないが、実体を持っている。
(中略)
脳が立て続けに二回スパークする。ぱちり、ぱちり、襞を模る黄色い線。蔓延る。アミーバに感染する。消える。脳が痺れを感じる。それは陰部によるものだった。陰部が痺れ始めていたのだ。アミーバが少しだけ移動し、這っていた部分がちらりと覗く。そこの部分の襞が薄くなっているような気がした。溶けるのかもしれない。アミーバは脳を溶解する成分を持っているのかもしれない。うじゅり、アミーバが大きな感覚を起こす。あ。陰部が声を漏らしたようだった。ぱっと飛び散る液体。突き出された陰部。金色の光が放たれ続け、次第に後光と相まって、白か金が分からなくなる。視界が光だけを映す。黄色い線とは違うスパーク。アミーバがぷるぷる。陰部と私が分裂する。今も昔も、私は物体などではなかったのかもしれない。

 

 

経過によって、センテンスが短くなり、リズムがどんどんはやくなる。読む側もどんどん追いかけることになる。やがてイメージも追いつかなくなり、頭が真っ白になる。スパーク。恍惚。まったく他では体験できない、読書の快楽が味わえる。それが金原ひとみである。

 


ぬこの争い

昨晩、猫がすぐ外で争っていていい近所迷惑だったのだが、近所では猫を見るたびに毎回違う個体なので、野良って大変なんだなと感想を持つ。


どうも池袋のこの辺やあの辺は猫が多いらしく、はっと気づくと猫がいる。ぬこぬこロードと心の中で呼んでいる道もある。夜スーパーの帰りにレジ袋をかさかさ言わせていると、四匹くらい痩せこけた子猫がみゃーみゃー言いながら集まってきたこともあった。


それでときどき、深夜、アパートの廊下にもいたりして、これは正直驚く。びっくりしてうわーと声を出してしまうほどである。
窓を開けるとベランダに猫がいるのも、どきりとする。


先日、階段をおりたところに猫が寝そべっていて、逃げずににゃんにゃん泣いていたので、なでてやると噛まれた。
甘がみだったけれど、ちょっとショックであった。
猫の気持ちはわからないニャ。


以上、「猫」を「女性」に置き換えて読んでください。